赤い頭頂部に純白の翼、国の特別天然記念物タンチョウの姿は神々しい。だが、北海道の釧路市動物園では、鈍く光るアルミニュウムの義足姿も公開している。
 全国でまれなタンチヨウ専門の獣医師。義足の材料のアルミの棒や着地部のゴムはホームセンターで買う。樹脂で型を取り、手作りする。費用は1本
 6千円ほど。現在5羽がリハビリ中だ。
 高松市出身。立命館大を卒業後、動物にかかわる夢を捨てきれず酪農学園大獣医学部に編入した。28歳で就職、ほとんど知識のないタンチヨウの担当に。「相手は目線の高さが同じで力も強い。顔をつつかれましたが、体を抱えれるようになりました」
 国内のタンチョウは絶滅が心配され、釧路温泉を中心に約1800羽がすむ。環境省によると昨年度、事故などで肢体も含めて最多の53羽が収容された。車とぶつかることも多く、動物園に運び込まれる。歩けないと弱って死ぬ。
 偽足は手入れが欠かせないので野生に帰せない。飼育室は埋まり、約30年の寿命まで飼育を続けるのかと悩むこともある。「現状を見てもらい、交通事故に遭う数を減らしたい」と2年前から義足姿を見せ始めた。
 見学者に偽足を手に取ってもらったり、手術室を見せたりする。「なぜ保護しなければいけないのか。動物園は人間と社会を考える場でありたい」   文・写真 高田誠
 ホー先生 世界の二酸化炭素(Co2)の排出が減っていると聞いたけど
 A 新型コロナウイルスの感染が広がり、国内でも在宅勤務や外出制限。お店の営業や工場の稼働停止で   
  陸上イージス撤回で、首相が新たな保安戦略に言及した
経済活動が停滞した。英国などの大学の推計で世界の今年4月初旬の1日の排出量は昨年の年間平均値より約17%も減ったそうだ。
 ホ ホホウ。
 A 大気中のCo2濃度
は春先に増えるなど季節で変わるけど、日本の人工衛星「いぶき」のデータからも、4月の東京周辺のCo2濃度の増え方は例年の半分以下だつた。国際エネルギー機関(IEA)の推計では、今年のエネルギー関連のCo2排出量は前年に比べて8%減になりそう。史上最大の下げ幅らしいよ。
 ホ 不便な思いもしたけれど、逆に温暖化対策が進んだってことじゃな。
 A いや、一時的に排出減っただけで危険は変わらない。産業革命前の18世紀半ばのCo2濃度は約280ppm(0.28%)だつたけど、毎年増え続けている。米ハワイでは今年5月、過去最高の417.1ppmを観測した。温暖化対策の国際取り決
 め「パリ協定」がめざす1.5未満に抑える目標の達成には、2030年までに毎年7.6%排出を減らす必要がある。
 ホ まだ足りないなあ。
 A カギになるのが新型コロナからの回復を目指して計画される経済対策だ。従来の化石燃料をおおおく使う産業や道路などのインフラにではなく、省エネや再生エネルギーの普及加速などCo2排出をゼロにするのにお金を使うべきなんだ。
 ホ 在宅勤務やデジタル化なと役立つかな。
 A 車通勤の人が減ったりするからね。国連のグラーレス事務総長は「回復を正しい未来に向かう機会にする必要がある」と話しているよ。
  (ロンドン=香取啓介=)
2020(令和2)7/12  ひと&わかる 朝日新聞朝刊