初めて候補になったのは23年前。「7度目の正直」の吉報は、襟裳岬に近い故郷の北海道浦河町で、仲間と共に聞いた。「役場の人、同級生、みんな僕が競馬のG1レースをかったように喜んでくれた」。東京とつないだ中継会見の画面越しに、歓声が聞こえた。
 大学入学とともに上京。新宿ゴールデン街のバーで働いた。編集者や書評
家を経て、新宿・歌舞伎町の暗がりにうごめく人間の欲望を描いた「不夜城」で鮮烈にデビューを飾った。暗黒社会を描く「ノワール小説」の旗手として注目を集めた。
 10年後、東京を脱出し、長野・軽井沢に移住した。きっかけは余命いくらもない愛犬のためだつた。40代も半ばになって、肩の力が抜けた。「書きたいものを書きたいときに書くようになつた」。犬と共に生きる喜怒哀楽を描いたり、山岳小説、歴史小説を書いたりと幅が広がった。「基本的に、馳星周という小説家の本質はいろんなものを書いても変わらない」
 受賞作で描いてのは、犬と無償の愛のお師匠さま。人間は自分を含めて、愚かでどうしようもない」。いまも2頭の愛犬と暮らす。
 昨年に続き、夏を浦賀ですごしている。競走馬の産地でもある、この地を舞台に連載も始めた。「至高ですよ。年をとると、こんなに良い町だったのかと思う」
     文・奥平優平 
     写真・文芸春秋提供
 アウルさん 石炭火力発電所が大幅に減るの?
 A 国は2030年度までの、効率が悪い石炭火力発電所をできるだけ減らす方針なんだ。全国に140基あるうち、低効率な発電   
  公立の悪い旧式を減らす。ただ、高効率なら新設も認める
所は114基。その発電量を9割ほど減らすことを想定している。100基程度の休廃止に相当するよ。
 ア どうして減らすの?
 A 石炭火力は、地球温暖化の原因になる二酸化炭
素(CO2)の排出が多いからさ。とくに、「亜臨界圧」や「超臨界圧」という旧式の発電所は効率が悪い。どれだけ効率的に発電できるかを示す「発電効率」は40%以下で、Co2の排出量が多いんだ。
 ア 効率がいい石炭火力発電所は減らさないの?
 A 減らさないで、新設も認める方針だ。いま主流の「超々臨界圧」という効率がいい発電所の発電効率は41~43%で、Co2の排出量もその分少ない。ただ、それでも、天然ガスの火力発電の約2倍のCo2は出るんだけれどね。
 ア 外国はどうなの?
 A 15年に温暖化対策の国際ルールに「パリ協定」ができ、欧州の主要国ははるかに対応が進んでいる。フラン
 スは22年、英国は25年、ドイツは38年までに石炭火力を全部廃止する目標を掲げているよ。
 ア 日本もいずれは全部廃止するのでは?
 A 政府は、全部廃止するのには消極的だ。安くて調達もしやすい石炭による火力発電を、安定的な電源として重視しているからね。30年度でも国内の総発電量の26%は石炭火力で賄う方針なんだよ。
 ア 世界の流れに取り残されてしまうのでは?
 A 日本でも8メガバンクが石炭火力の新設にお金を出すのを原則やめるなど「脱石炭火力」の動きは広がりつつある。欧州のように再生可能エネルギーをもっと増やすなど対応を急ぐ必要があるね。
        (桜井林太郎)
2020(令和2)7/17  ひと&わかる 朝日新聞朝刊