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 被爆地・長崎&素粒子
  長崎には公文書館がない。被爆からの復興事業や追悼行事に関する行政文書さえ、保管期限が過ぎると多くの廃棄されてきた。
 「戦後の歩みも含めて、今につながる長崎の歴史です」。個人が保管する公文書や被爆者日記など民間に眠る資料を集めて残してほしい―。行政の姿勢を問う質問状を研究者仲間と県に送り、市民向けシンポジュウムも計画する。
 早稲田大で考古学専攻、学芸資格を生かそうと、出身地・広島の平和記念資料館に就職した。そこで、同級生の生死を調べ、名簿を更新し続ける被爆者と出会った。原爆が投下された8月6日から続く傷がある、と知った。
 2006年に夫の転勤で長崎へ
  被爆者の手記を読み、カトリック信者たちが長い間、被爆死した肉親を「清く美しい犠牲」と表現していたのが気になった。悲惨な側面を証言するのは戦後40年近くたってからだ。その背景を文献やインタビューから読み解き、九州大大学院で博士号をとった。
 県や市には公文書館がある広島と比べ、長崎の資料が少ないと気づいたのはそのころだ。
 今春、被爆者団体で健康調査の原爆や日誌の整理を始めた。被爆者たちはみな高齢だ。山積みの書類を1つずつ封間に分け、その目録と運動史の証言をまとめ。来春の出版をめざす。「記録を次世代につなぐことで長崎に恩返しをしたい」
     文・写真 榎本瑞希
 ホー先生 日本に素粒子の実験施設をつくる計画がうまくいっているのか?
 A 岩手・宮城両県にまたがる北上山地に、日米欧が建設しようとしている大型加速器「国際リニアコラ   
  宇宙誕生の謎に迫る「ILC」。文化省の計画入らず
イダー(ILC)」のことだね。日米欧の研究者が日本での建設を求めて、文部科学省も2014年から本格的に検討を始めた。ところが、文部省が今秋3年ぶりにまとめる大型研究計画
の基本構想に入らないことが決まり、早期の実現は難しくなった。
 ホ どんな計画ゃ?
 A 長さ約20キロのまっすぐなトンネルを掘って装置をつくり。電子とその反対の性質を持つ陽電子を光の速さくらいまで加速して正面衝突させる。大きなエネルギーを一点に集中させて、宇宙誕生のビッグバーンが起きた直後の状態を再現できるというよ。
 ア それで何が分かるんじゃ?
 A 例えば、ノーベル賞も受けた「ヒッグス粒子」の性質だ。万物に質量を与える素粒子で、欧州にある1周約30キロの加速器LHCが見つけた。直線の加速器なら、円形のLHCでは調べられなかった素粒子の詳しい性質を測
 定できる。一言でいえば、宇宙誕生のなぞに迫れるんだ。
 ホ 実現が遠のいたのは残念じゃなあ。
 A 建設予定地が東北地方とあって、東日本大震災からの復興の象徴としても期待された。でもね建設費に約7700億円かかる。半分は欧米が負担するけど、残りは日本だ。毎年400億近い維持費もかかるとされ、総額は1兆円を超えそうだ。
 ホ ホホウ! 高いなあ。
 A 費用の割に画期的な成果は期待できないという専門家もいる。ただ。研究の中心となる日本の高エネルギー加速器研究機構は、誘致を諦めていない。推進組織を一新して取り組ね方針だよ。
         (石倉徹也)
2020(令和2) 9/24 ひと&わかる 朝日新聞朝刊