群馬県大田市出土 古墳時代 6世紀
埴輪 桂甲武人
 甲冑に身を固め威儀を正す武人埴輪で、埴輪唯一の国宝である。切手や教科書にもしばしば登場し、もっとも有名な埴輪といってよいだろう。
 頬当や首を守る錣を備えた日本列島独自の衝角付冑をかぶり、両腕には籠手、胴部を覆う桂甲は小札を連ねて作られ、草摺と一体となる。同じく小札製の肩甲とズボン・沓形の付属具も着けている。太刀の右手を添え、左肩に掛けた弓を左手で握り、手首には鞆を巻く。背中には矢入具の靱。フル装備の古墳時代の武人が眼前に現れたかのようだ。
 人物埴輪の全身像には精巧に造られた例は多いが、日本列島の甲冑に多い腰部のくびれや、段状にわん曲
する草摺下縁をかたちづくる腰札・裾札まで、これほど写実的表現した例はきわめてまれである。高い技量をもつ製作者(工人)の手によるものであろう。
 古墳時代の武具は、まず可動性のない歩兵用の鉄製甲冑が量産された。やがて中国や朝鮮半島の騎馬用甲冑や長柄の矛などの発達の影響で、伸縮性に富む桂甲が6世紀ごろ普及した。しかし日本列島では、一貫して刀剣が重視され、以降も桂甲・太刀を源流とする式正鎧と太刀が古代~中世の武装の基本となる。
 ところでこの埴輪をモデルにしたのが1960年代
の映画「大魔神」シリーズである。戦国時代、温和な顔を憤怒の表情に変えて、戦乱や領土の圧政に苦しみを救うヒーローだ(「ハモの大魔神」と呼ばれたプロ野球・佐々木主浩投手も記録に新しい)また80年代
にNHK教育テレビで放送された「お-い! はに丸」のキャラクターもこの埴輪を連想させる。
 これほど広く親しまれるのは、秀逸な埴輪としての存在感や洗練された造形に加え日本の伝統や独自性が感じられるからではないだろうか。
          (主任研究員・古谷毅)