内田理央  屋比久知奈  三浦春馬  桜井ユキ& 片岡秀太郎  永作博美         
「好き」に一心不乱 カッコいい
    「(ファンが)一心不乱に踊ったり歌ったりする姿つて、1周回ってカッコいい。好きなことを好きって言えるって、素晴らしいなと思います」
  文・杢田光
  写真・滝沢美穂子
 桜井ユキ主演
「だから私は推
しました予告編
 NHKの「だから私は推ました」で、連続ドラマ初主演を務めている。地下アイドルにぞっこんのアラサー会社員の役。これまでの作品で見せてきたクールなイメージとはうらはらに、サイリウム(発光スティック)を片手に、ノリノリでアイドルの世界にはまっている。
 主人公の愛は周りから「イイね」と評価してもらいたくて、外面ばかり気にする日々を送っている。地下アイドルのハナ(白石聖)と出会い、不器用な姿に自分と似たものを感じ、熱心応援するよう似なる。
 アイドルオタクの役と聞いたときは、「えっ、私で大丈夫かな」と不安がよぎった。子どもの頃から、特定の芸能人に入れ込んだことも、アイドルのライブに言った経験もない。「自分にないものばかりなので、今までの感覚を一回捨てて、フラットにいくしかないてゼロから役づくりをした。入浴中に、アイドル曲のかけ声をつぶやいて練習した。
 いざ撮影に入ると、劇中の5人組アイドル「サニーサイドアップ」のメンバーのおかげで、すんなり役に入り込めたという。「白石さん演じ
 るハナちゃんがステージに出てきた瞬間、『好き!』と気持ちが動きました。『役としてこの子たちを応援しなきゃ』としうより、一目ぼれのような感覚」だったという。「すっかりハナちゃんのファンです。恋愛と一緒でいすね」
 脚本は、連続テレビ小説「ごちそうさん」などで知られる森下佳子が書き下ろした。サスペンスやSNS時代の生きづらさなど、様々な要素が絡み合い、「ひとくちにはできない」魅力があると感じている。
 初めての「推し」ができて、思いがけない場面で笑ったり泣いたり、これまで予想もしていなかった感情にも出会えた。今後、実際のアイドルのライブにも足を運ぶつもりだ。
 
 上方歌舞伎のベテラン女形、片岡秀太郎が、歌舞伎脇役の重要無形文化座保持者(人間国宝)として、認定されることとなった。「本当に思いがけないことで、感無量でございます」と喜びを語った。     

片岡秀太郎 人間国宝に
  戦後の関西歌舞伎を支えた。十三代目片岡仁左衛門の次男として、芝居の話が絶えない家庭に育った。「『キツネの手はこう』とか、『これがお化け』とか、乳が芝居から帰ってくるのを待って、食卓で色々な話をしました」
 立役(男役)の父から、女形の役について事細かに
 女形に上方らしさ情緒
 教わる機会はほぼなかったが、その文「友右エ門兄さん(四代目中村雀右衛門)、我堂兄さん(十四代目仁左衛門)、色々な方に教えて頂きました。美しい思い出がございます」と振り返る。
 1960年代、関西で歌舞伎の興行が低迷した時期は「芝居がしたいなあと。寂しい思いをしていました」。その後、父をはじめ、多くの方の尽力で関西の公演数は回復した。自身も、「恋飛脚大和往来」の遊女・梅川などを演じ、かみがたらしい情趣の女形として存在感を示す一方、後進の指導にも力を入れてきた。
 近年は、「恋飛脚大和往来」の茶屋おえん、「盛綱陣屋」の微妙など、年配の女形役老女役の大役を演じる機会も
   増えた。
 「昔は『秀太郎おじいちゃんがやったお姫様のほうが、お姫様らしい』というような人が、いはりました。今はそういう時代ではなくなりました」と、しみじみ語りつつも「若い人がどんどん育つていますから、今の若い子たち、色々なことを聞きに来てくれます」と、にっこり笑う。
 「大きな役を務めさせて頂いた経験をいかし、若い人を周りで支える。それで、お客様が少しでも喜んで下さるようであれば、それが私の今の生き方ではないかとおもつております。
     (増田愛子)
    「ぎょぶる」

 「ぎょぶる」?
 変な名前である。《「魚部」という場でつながるヒト・モノ・コト発見マガジン》とあるから。魚に関する雑誌のようだ。
 記事を見ると、魚に限らず深海生物や水生昆虫、カエルや海草の話も出てきて、つまり水にかかわる生物はなんでも守備範囲らしい。採集したり、飼育したり、保護したり、研究したりといった記事が、実に楽しげに誌面を埋め尽くしている。
 たとえば4月発行の最新号8号の特集は「魚部が感動する七人の侍 すごい人列伝」と題して、高校時代に自宅ガレージに100本もの水槽を持ってた写真家、湿地帯中毒の研究者、ウジは触れないのにウジに似たズムシの幼虫を愛する学芸員など、ひとくせもふたくせもある人たちを紹介している。
 過去の特集を調べてみると「種子島に魚部伝来」とか「身の回りの自然に私たちはどうかかわつていくか」などなど、強いて分類するなら、自然保護活動の広報誌のような位置づけだろうか。だが、そんな杓定規な説   
 水の生き物 自由に愛する部活
明では伝わりきらない自由さがこの雑誌にはある。専門家も市井の人々もいっしょになって、好き放題やってる感。
 もともと高校の部活動からうまれたというもの面白い。発行は「北九州・魚部(ぎょぶ)」。これは福岡県立北九州高校の部活動「魚部」にかかわった人々が立ち上げたNPO法人なのだそう。魚部の「部」は、クラブ活動の「部」だったのだ。今ではとうに高校の枠を超え、博物館やら大学やらそこらじゅうを巻き込んで、その活動は「生物多様性アクション大賞2017 農林水産大臣賞」を受賞するほどの深化と広がりを見せているらしい。
 このごろき、こういう地方発信型の、しかも行政や大手出版社からてらはない雑誌が楽しくなってきた。発行部数も発行頻  
 度も少ないけれど、今はネットがあるから全国どこでも購入できるし、技術が進んでデザイン性の高い雑誌も増えている。
 「ぎぶる」はそんななかでも格段に面白い。私が海洋生物好きなせいもあるだろうが、登場する人や書き手がみな自然体で、面白がっている姿がそのまま伝わってくる。かっこつけてないし、ときどきバカだし、それでいてちゃんと問題提起もある。雑誌づくりの原点を見るようだ。唯一残念なのは、誌面では定期購読を募集していながら、次はいつ出るのかさっぱりわからないことだが、その無頓着さにさえ妙に親近感が湧くのだつた。  2015年創刊、年2回不定期、2千部。NPO法人「北九州・魚部」が発行。自然や生き物を紹介、「全国の生き物好きに発信したい」と編集長の井上大輔さん。973円。全国の書店やミュージアムショップで販売。購読は「北九州・魚部」(https//gyobu.or.jp)へ。
 日本語で執筆 透明な膜隔てるよう
 
 李琴峰さん「五つ数えれば三日月が」
李琴峰さんの『五つ数えれば三日月が』(文芸春秋)は、自身にとって初めての芥田川賞候補作。結果は次点。選考会では「決してかなわない恋愛を直球勝負で描いた」と評価された。
 1989年、台湾生まれ、第一言語は中国語。祖父母は台湾語を、両親は中国語を話す。日本語を学んだのは15歳から。ポケットマンスターに名探偵コナン、村上春樹、日本の文化に親しんで育った。
 主人公の「私」は台湾生まれ、日本で働いている。大学院で出会った日本人の旧友は台湾で結婚した。友との再会を機に、主人公は故郷での日々を思い出す。
 振り切って日本にやって来た主人公は自分に重なるという。「ずっと震災のニュースを
見ていましたそれでも、日本に住みたいと強く思った。大学3年
生だつた2011年3月に交換留学で来日。大学院で再び日本を選び、就職でも台湾に戻らなかった。
 創作は15歳から、最初は中国語で書いていた。初めて日本語で書いた短編17年の群像新人文学優秀作を受けた。小説には中国語や台湾語が交ざる。「私は多言語を生きている。その環境を小説にしたら面白いと思った。
 「日本語で書くことは透明な膜を隔てているよう。もどかしさがあるが、だからこそ見出せる表現もある。漢字、ひらがな、カタカナ。異なる文字が響き合う「小説は日本語だからできる」
 デビュー作『独り舞』の主人公も同性に恋し、孤独を抱えていた。今作でも台湾と日本、二人の女性の親密な交流を繊細に描く。「セクシュアルマイノリティーは私が人生で抱えている大きな問題。これからねずつと書き続けています」    「中村真理子」
  ①子―マック・マッカーシー著「ザ・ロード」(黒原敏行訳、早川書房、2008年刊)、色々な解釈が可能で、万人に訴える力のある本だと思う。そういう意味で現代の神話。人間と自然との関係や、文明の裏側にひそむ生と死の真実とはこういうものだ。個人的にはこんな旅をしてみたいいう衝撃をおぼえた。
 ②町田康著『告白』(中央公論新社、05年刊) 町田氏の作品では『ホサナ』も凄かったが、平成ベストということならこちらか、ささいなことで人生が転落する不条理を見事に描いていて、悲劇は誰にでも起こりうる。そういう地続き感があり普遍的。
 ③辻邦生著「西行花伝」(新潮社、95年刊)文体の奥深さ、流麗さもさることながら、さまざまな人物の語りを  万人に訴える現代の神話
 
通じて西行像を浮かびあからせる手法が素晴らしい。重厚な辻作品群の中でも圧倒的に最高峰と断言できる。
 ?国分功一朗著『中動態の世界』(医学書院、17年刊)
 動詞の態をつうじて、そこにあるのに見えなかった世界が明らかになっていく展開がスリリングだ。世界をつくっているのは言葉だし、言葉が限定されると世界も限定される。そればはっきのわかった。
 ⑤増田俊也著『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(新潮社、11年刊) ある意味、取材系ノンフィクションの究極だ。異種格闘技戦の真実を追求する旅路のようでもある。。格闘技に興味がなくても面白く、読んでいない人はその分人生が不幸になる、そんな本である。
      (作家・探検家)
(令和元年) 2019.7.18日(木)     朝日新聞夕刊