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アジやヒラメがお出迎え
  東海道線の車窓に穏やかな海が広がった。小田原駅に降り立つと、箱根に向かうのか、荷物を抱えている。小田原はかつての東海道の宿場町で城下町として栄えた。海が近く水産物が豊富で、かまぼこでも有名だ。江戸時代、旅人の必需品として梅干しが重宝されたことから、梅も特産物として知られる。
 改札口を出て左を見上げると、藍色が印象的な壁画に出会った。俳優で画家の片岡鶴太郎さん(64)が原画を描いた陶板レリーフで高さ3メートル、幅約15メートルの大きな作品だ。「小田原の自然の中でいのちいっぱいに生きている生活に賛歌を贈る絵を描きたいとおもつた」(片岡さん)という通り、ヒラメやアジ、イシダイのほか、海や桜など地域にゆかりの深い動植物がいきいきと描かれている。
 作品は、2002年の冬に、駅の東西自由連絡路「クロード」の開通記念制作物として設置された。富士山や箱根への玄関口の小田原に、「観光客を迎えるおもてなしの心を表すものを」との思いか
ら、「わたしたちの自由通路をつくる市民の会」が寄付金を募り、あたたかみの優しさを感じられる絵柄の片岡さんに依頼したという
 通勤で駅を利用する団体職員の小口裕紀さん(43)は、「藍色で落ち着いた雰囲気が小田原の町にあつている。自然にそこにある感じです」と語る。大画面にのびのびと泳ぐ魚たちは、今日も行き交う人々を見守ったいる。
        (清水真穂美) 
 ◆小田原駅 東海道線、東海道新幹線、小田急線、箱根登山鉄道、伊豆箱根鉄道が通る。東西自由連絡通路には、「巨大小田原ちょうちん」とステンドグラスも
 
 
地下街を泳ぐコイの大群
 ◆ゼスト御池 スーパーや飲食店なと38店舗が軒を連ねる。アート作品は他に、「おぼこ」と「いけず」の二体の地蔵「おぼこいけず地蔵」(城たいが・作)がある
 全長約14メートルの壁に色鮮やかに描かれたコイの大群。我先にと折り重なのように上を目指している。 作品があるのは、京市役所前駅直結の地下街「ゼスト御池」。改札口から西へまっすぐ歩いた先には寺町広場に置かれている。現在の地下街は、スーパーや薬局などが並び、地元の人でにぎわいを見せているが、以前は洋服店が中心で、人影のまばらだった。壁画は、そくな業績低迷を打開するリニューアルプランの一つとして2008年に設置された。
 作者は、京都市在住の壁画絵師、木村英輝さん(77)。急流をさかのぼるコイは竜になる。としう中国の故事「登竜門」から着想を得た。水の中をイメージし、映り込みの少ないアクリルミラーを使用。アクリルガッシュで躍動感たっぷりに描いた。「辰巳(東南)の方向に向かって勢いよく上昇するイメージ」と木村さん。作品制作時は常に縁起の良いモチーフや方角を意識しているという。
 地下街には、計四つの広場があり、内三つを市民に貸し出してい
  る。今では年間300件ほどのイベントが催される人気の場所だ。作品を管理する京都市御池地下街の土岐和則さん(46)は、「月1でライブをする方も多いです。ここから巣立つて、成功して欲しいですね」と話す。広場を利用するシンガー・ソングライターの明香音さん(29)は、「コイが未来に向かっている感じ、私もがんばろうって思えます」と目を輝かせた。
     (文・町田あさ美) 
 (令和元年)2019.6.11(火)  朝日新聞夕刊