No1 NO2  No3   No4 No5  No6  No7&No8  No9&NO10  NO11 &No12 No13&No14
展望台内部には、北側の山並みを眺める「風穴」、氷室からの冷気が出る「風室」などがある=滝沢美穂子撮影
 風邪を感じる 天空の「樹木」
 
 神戸市や大阪湾を一望かる六甲山、爽やかな風が吹き抜ける標高883メートルの高台に、枝葉を張り巡らせた大樹のような建物が立つ。中には、遠くを眺める人の姿。「自然体感展望台 六甲枝垂」だ。
 吉野産で造形した高さ10メートルの「幹」を、ステンレスの枠に木材を組んだドーム状の「枝葉」が囲む。見学に訪れた通訳案内士の女性は「外観は一見、展望台と分からない。外国のお客さんからも、あれは何?と聞かれる」と話す。
 設計は、京築かの三分一博志さん(51)。「京築がいかに地球の一部になるのか」をテーマに「水や太陽などの動きを感じられるような」仕組みを取り入れた。「幹」の内部にある氷室には、展望台の隣に設けた水盤から冬、氷を切り出して保管。夏に扉を開くと冷気が吹き上がり、天然クーラに、冬は「枝は」に氷が付着する「樹氷」が見られる。着水しやすいデザインを求める実験を重ねた。
 この場所には以前、座ったまま全方位を見渡す「回る十国展望台」があった。1995年の
阪神大震災以降の来場者減や老巧化から、2002年に営業終了。翌年オープンした観光施設「六甲ガーデンテラス」の新展望台としてコンペを行い、三分一さんの案を選出。今月、開業10年目を迎えた。
 梅雨の晴れ間、展望台は夕焼け色に染まった。ふっと吹いた風に、「枝は」のざわめきが聞こえてきそう。
        (木谷恵史)
 《アクセス〉六甲ケーブル下駅からケーブルカーとバスで約30分
 
作品には武田双雲さんのメッセージがある=相羽郁朗撮影
 風邪を感じる 天空の「樹木」
 黒々として墨の飛沫がみずみずしい。墨痕淋漓とはこのことか。まるで今、高さ2.7メートル、幅10メートルの書道のアート。東京メトロ明治神宮前の千代田線と副都心の改札口を結ぶ連絡通路の途中の壁面にある。2008年の副都心線開業時、池袋から渋谷駅までの間8駅に設置された14作のパブリックアートのうちの一つた゛。
 作者は普通の書道家の武田双雲さん(44)。希望という漢字を解体し、全ての点と線を恒星と惑星、原子核と電子に見立てて再構成しているという。「昔から、相対性理論や量子力学のマクロとミクスの世界観が大好き、壮大な観点から見れば悩みなんてちっぽけなもの。地下鉄駅を行き交う人たちを、あったかい希望の灯でいやしたかつた」と語る。
 「地下鉄特有の閉塞感を緩和し、お客様にゆとりと潤いを感じてほしい」と話すのは、当時設置に関わったメトロ開発の保坂力さん(52)素材の陶板タイルは、墨の滴りやかすれを表
 現するために何回も置き直しをしたという。
 毎日アートを見ているという駅務員の佐藤なつみさん(22)は記者が本作の世界観を伝えると「いつも不思議に思っていましたが、書かれていたのは希望という字だつたですね。なんだか力をもらえる気がします」。地下通路の一角に広がる「宇宙空間」にはわったりとした時間が流れたいた。
      (小松麻里)
 (令和元年)2019.8.20日(火)  朝日新聞夕刊