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 ㊨「水神おんたつの幣高さ36センチ ㊧「きじんの幣」高さ28.5センチ、いずれも中山義弘作
 神霊宿す依代 民間信仰の宇宙
  神霊が宿るための依代として供えられてきた御幣。高知県香美市の山深い物部地区を中心に伝わる。陰陽道や修験道、密教、神道が混然となった民間信仰「いざなぎ流」では、神楽や祈祷の際に計200種ほどの特徴的な形の御幣を用いられてきました。当館ではいざなぎ流の100点超の御幣のほか、仮面や祭文などを収蔵し、一部を常設展示しています。
 いさなぎ流の神様には、天井裏にまつる高位の「家の神」、「山川の神」及びその眷属などがいます。太夫と呼ばれる土地の宗教者が、それぞれをかたちどつた御幣を神から切り出し、神霊を宿らせます。「水神おんたつ」と山に住む妖怪「きじん」の御幣は可愛い見た目ですが
 実は目口があるものは怖い神霊。下手したら人間に危害を加えてくる荒々しいものです。「接触すると因縁をつけるチンピラのようなもの」という太夫もいました。供え物をし、祭文を唱えて機嫌をとり、元いた場所への帰還などをお願いします。
 いざなぎ流は、人間の負の勘定に起因する呪いの一種「呪い組祖」の概念があります。「呪祖のみてぐら」は太夫が呪詛を集め封じる装置。藁の輪に呪詛の大元「ダイバの人形」幣と御幣を立てたものです。封じた後に壊して土地に埋めたり川に流したりして呪詛を祓います。
 現在、地区の過疎化で太夫はわずか数人。存続が危ぶまりれるいざなぎ流ですが、渦巻くような複雑さを持つ民間信仰世界の宇宙を、今後も伝え続けたいと思います。
   (聞き手・安藤麻里子)
   
  近代落語の祖とされる落語家・初代三遊亭円朝(1839~1900)は、人情噺に加え怪談話の名手でもありました。円朝の禅の師だつた山岡鉄舟が創建したのが、この全生庵。円朝が収集し、噺の創作の参考にしたとも伝わる幽霊画コレクションを所蔵しています。足がない幽霊画の先駆けと言われます。伝丸山応挙の作品を含むユニークな50幅。毎年8月に虫干しを兼ねて公開しています。   怪談の名手 円朝の愛藏品
 伊藤春雨(1882~1961)の「怪談乳房榎図」は後に歌舞伎化もされた円朝作の怪談の一場面。主人公の絵師・菱川重信は、美しい妻に横恋慕した弟子によって殺害される。幼い息子まで滝つぼに投げ捨てられたそのとき、幽霊となつた重信が息子を抱えて水中から現れた―。コレクション随一のすざましい形相ですが、我が子を抱く手つきは優しくですね。
 一見普通の女性を描いた「皿屋敷」。右の袂が透けていることで幽霊とわかります。
  作者は、円朝と交流があった綾岡有真(1846~1910)。ふすまの菊の絵が、皿を割ったために殺害され、夜ごと皿を数える「お菊さん」だと示唆しています。顔を隠して忍び泣く姿は清楚な印象を与えます。
 円朝の代表作に「新景累ケ淵」という怪談゛ありますが、「真景」は「神経」にかけたものだと言われています。人間の心の奥底にあるやましさやおびえる気持ちが幽霊を見させるのでしよ。恐ろしい絵も、背景の物語を知ると見え方が違ってきます。   (聞き手・星亜里沙)
 
 
令和元年(2019.8.15)(木)   朝日新聞夕刊