No1   芥川賞 浅田次郎 角田光代 木内昇 李龍徳 吉村満壱
 
 
  第192回芥川賞・直木賞が決まった。芥川賞に選ばれた古川真人さんの「背高泡立草」、直木賞に選ばれたのは川越し宗一さんの「熱源」。どのような議論をへて受賞にいたったのか。
 芥川賞は全体に低調で厳しい意見が相次いだ。と選考委員の島田雅彦さんがふり返った。選考委員は各候補作に「〇」「×」「△」の3段階の評価をつける。最初の投票で「〇」をえたのは古川さんと木村友祐さんの「幼な子の聖戦」だけ。ほかは「△」か「×」だつたという。受賞の目安は過半数の「〇」を得ること。1度目の投票では誰も過半数に届かず、「『受賞作なし』の気配が濃厚に漂い、重苦しい空気が広がりました」と島田さん。
 上位の古川さん、木村さん、千葉雅也さんの「デットライン」で2回目の投票を行い、古川さんが「ちょうと半数」の「〇」を得て、「8分間の沈黙のあと」、△を〇に上げる、とある選考委員が発言したことで受賞が決まった」と
 芥川賞 厳しい評価 8分間の沈黙 
 いう。
 受賞した古川さんは「草刈りという退屈な作業を描く中で、土地の歴史的な重厚性をたくみにすくいあげた」と評価された。次点は千葉さん。「ドゥルーズの哲学と、主人公のアイデンティーの生成変化をうまく組み合わせたという評価があった。ただ昨今自伝的小説を上回るパワーがあるかという点ではネガティブな意見もあった。
 木村さんには「エンターテインメント的な面白さを評価する人はいたが、それゆえにだめだ、エンタメに走りすぎた、という意見もあった。政治の劣化と言われるなか、厳しい風刹がふんだんで、そのタイムリーさを私は買ったのですが」と話した。
 あとの2人には厳しい評価が集まり、乗代雄介さんの「最高の任務」は「複雑なたくらみがあるが、ややもすると自身が得意とする手法が目的かしている」」、「ペダンティックなスタスルヘネガティブな評価が多かった」。
 一方、直木賞は1回目の投票で川越宗一さんの「熱源」に票が集まった、と選考委員の浅田次郎さ
 直木賞 投票1回目から支持集める 
んは講評した「相当難しい資料を駆使し、近年まれにみる大きなスケールで小説世界を築き上げた」と話した。
 次点は小川哲さんの「嘘と正典」3番手が誉田哲也さんの「背中の蜘蛛」だつた。2回目の投票を行うにあたって、この3作は、4回目の候補の湊かなえさんの「落日」を加えるかどうかで議論となつた。今回は、湊さん以外はすへて初めての候補だつた。
 浅田さんは湊さんについて「数を書いていて読者に支持されている方。ストーリーテリングに一日の長があるのし歴然としている。湊さんを決選投票にの残さないのはおかしいという意見があり、(4作で)慎重に選考したと経緯を明かした。
 小川さんは「発想がユニークだが、ストーリーテリングに乗せていく膨らませ方が足りない、分かりづらいという意見もあった。強く推す委員とネガティブな委員と分かれました」。誉田さんには「力のある小説。インサイドを詳しく書いていて、警察小説としては説得力がある。ただ、捜査のITのシステムはよく理解できない」。
 湊さんへの評価は「今までの作品に比べて完成度が高い。ここで受賞しないという手はないという強い意見もあったが、委員の間で一致せず、文章がくどい、分かりづらいという意見があつた」。呉勝浩さんの「スワン」は「映像ありきで小説というスタイルを取っていないのではないかという意見が強かった。これだけの人間が物語の中で死んでしまうからには、それなりの苦悩を作家が背負わなければ文学ではないと思う」と厳しい評価だつた。
   (興野優平、中村真理子)
 (令和2年)2020.1.26日(日)   朝日新聞夕刊