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"隠れビッチ"やってましたに主演   佐久間由衣 
さくま・ゆい 1995年、神奈川県生まれ。主な出演作に、NHK連続テレビ小説「ひょっこ」、ドラマ「トランジットガールズ」「チァ☆ダン」なと゜。13日公開の映画「屍人狂の殺人」にも出演。「"隠れビッチ"やってました。」は6日公開
   の皆さんがどうにかしなきゃと支えてくれた」。まっすぐしか走れない。まさにひろみそのものを表すような言葉だ。彼女が言うと、いやみなく聞こえるのが不思議だ。「とりあえず球をまっすぐ投げろ、できることはこれだ、と突っ走った。細かいテクニックなことは出来なかったということなんですけど」
 丁寧に答える透明感ある声や、気さくな笑顔にすっかり魅了された。これが素なら、最強だ。道を外れて走る姿も見てみたい。
   文・神宮桃子 写真・村上健
 
 「隠れビッチ」とは、強烈なタイトルだ。肌の露出は15%、清楚なふりをして男の心をもてあそび、こくはくさせたら撤退。演じる26歳のひろみは、愛されたいという気持ちをこじらせ、振り切れっぷりが痛々しい。本当の幸せを得られるのか、過去に向き合いながらもがいていく。
 極端なところもある役だが、「彼女の背景や環境をひもとくと、理解はできた。私自身もあ表に出る仕事で、承認欲求は少なからずある。通じる部分は見えたかな」と言う。
 告白され、上機嫌で家に帰ると、
 まっすぐしか走れない
ドスのきいた声で「ただいま-」。風呂上がりにビールを気持ち良くあおり、電話で男を振る。清楚な外での顔と、がさつな素のギャップがおかしい。「友達には、素のひろみは私だね、と言われます。あそこまでではないと思うけど・・大ざっぱなところがあるし、ふざけるのも好き」
 鼻をほじくるシーンなど勇気がいりそうだが「全然、抵抗はなかった。でも(三木康一朗)監督から『もっともっと』と言われ、もっとって何だろう、じゃあ飛ばしてやろうかな、って感じでやってました」と鼻くそを飛ばす
ふりして笑う。
 映画初主演。役割を果たすのに必死で、意識する余裕もなかったという。「監督に言われないと気づかない。気づいてもできない。悔しくて、とにかくしがみついた」。作品は、一筋縄ではいかないような余韻を残す。「人は簡単には変われない、きれいごとだけではない部分が突き刺さった」とリアルな見方だ。
 2017年のNHK連続テレビ小説「ひよっこ」で、主人公の親友を演じて注目を浴びた。「ひよっこの時も今回も、まっすぐしか走れなくて、周り
   
広がる格差 ある家族の物語
「家族を想うとき」ケン・ローチ監督 
 英国のケン・ローチ監督の「家族を想うとき」が13日から公開される。83歳の巨匠は前作「わたしは、ダニエル・ブレイク」で、2016年のカンヌ国際映画祭バルムドールを取り、引退を表明した。だが母国の経済格差の拡がりが加速する状況を憂え、再びメガホンを取った。
 ローチ監督は「資本主義に問題がある」とみる。「資本主義は迅速に富を集めることで、テクノロジーの発展に貢献してき
た。しかし今、進化しすぎたようです。あまりに効率を求め、人類にとっての足かせになってしまっています」
 今回の主役は2人の子どもを育てる夫婦。夫リッキーはフランチャイズの宅配ドライバーとして独立する。ところが独立とは名ばかり、本部からのノルマは過酷なうえ、労働者としての権利は奪われる。妻のアビーは介護福祉士。人手不足で、時間外でも呼び出される。夫婦とも疲労困憊の中、長男が問題を起こす。
 舞台は英国だが、日本のコンビニ店のオーナーと本部の関係や、介護現場の人手不足などにそのまま置き換えられる。ローチ監督は「世界の経済システムが似通ったものになった証拠」と話す。「つまり大企業本位のシステム。大企業も競争にさらされ、手っ取り早い人件費を減らせるシステムが広がった」
 こうしたマクロな主題を持ちな
がら、ローチ監督はミクロな視点を疎かにしない。今回、一家の暮らしぶりをギスギスした場面から、胸がすくような痛快な場面まで、繊細かつ詳細に描写している。
 「先ほど『日本の状況と同じだ』と言って下さいましたが、人物描写は個別具体的であればあるほど、観客は自分の物語だと感じてくれるんです。普遍性を求めすぎると、逆に真実が遠ざかってしまいます」
 ローチ作品には、芸術的に突出した映像や驚くような仕掛けがあるわけでない。弱い立場の人々をただ優しく見守る。「私は観客を驚かせたいのではなく、共感してもらいたい。だから観客が登場人物と同じ部屋に居合わせたように撮ることを心がけています。例えば、人物の顔を超クローズアップにしたりせず、普段目にしている画格で撮っているんです」
    (編集委員・石飛徳樹)
令和元年.11.21日(土) 朝日新聞夕刊