1969・1991  1951・1972・1970・1972       
 
 静岡県西伊豆町の田子港沖、深さ3メートルの海底に設けられて「家」で生活する実験が試みられた。海底からの第一声は「海は濁っている」だったと当時の潜水技術者はエンジンのない潜水艦のような空間で2泊した後、海上へ帰還した。
 「宇宙の次は海」と言われた
 この時代。欧米各国は海洋資源の開発などをにらみ、海底作業や居住実験に取り組んだ。日本でも国家プロジェクトとして「シートピア計画」が始動。水深100メートルで1カ月暮らすという目標は果たせなかったが、だが、その後の潜水技術の発展などに結びついた。




    





◆時代を切り取った写真を振り返り、次代を
象徴した「ことば」への想いをつづります。
 
   中学の修学旅行は京都・大阪の2泊3日。万博見学はその年限定の目玉企画だつた。
 わび・さびたっぷりの京都の神社巡りから一転、岡本太郎の太陽の塔がとどーんとそびえる会場は、突き抜けた解放感にあふれていた。学生服姿の黒さっぽい僕たち一団は、その空間から取り残された存在に思えた。
 会場には白地に大きな赤い水玉模様のワンピースを着た女性が待っていた。母親世代にはない伸びやかさに、どよめきが起こった。にこやかに迎えてくれたその姿は、時空の異なる未来からすっと降り立ったアンドロイドのようで
 でもあった。
 彼女は担任のかつての教え子の婚約者だった。僕たちを案内してくれたのだ。全自動で体を洗ってくれる「人間洗濯機」や、ガラスに覆われキラキラ輝くパビリオン・・。未来は驚きのなかに詰まっていた。
 10年後、僕は友人と大阪に出かけた。食い倒れが目的の旅だったが、町のありようにひかれた。大阪駅の地下街にある大きな丸い柱には、新聞が貼られていた。串揚げの店では男こえボーカルグループのダークダックスよろしく、カウンターに対して45度
構えたおじさんたちが昼から酒を飲んでいる。万歳をしながら走るランナーの看板が光り、大きなカニの模型が脚を動かしていた。
 その混沌と自由は、よそ行の顔をした東京にはない魅力と力強さにあふれていた。後年見た映画「ブレードランナー」や「未来世紀ブラジル」の映像イメージとも重なり、僕には未来を予感させる驚きの街だつた。
 近年、おおさかもおしゃれになってきた。それも悪くはい。しかし、予定調和で再開発された街に未来を探すことは難しい。
(長日新聞メディアプロダクション校間事業部長 前田安生)
 
  4月から税率3%の消費税が導入されたこの年。1円玉不足に頭を悩ます店も少なくなかった。
 千葉県舟橋市の百貨店が考えたのが、鄭か80円のお菓子を1円玉20枚、100円のお菓子を30枚で販売する破格の大安売り、多い日には7万枚もの1円玉が集まったという。
  同店は「1円玉集めの手間と時間を考えると、多少の出血サービスも苦になりません」。
 造幣局も1円玉の製造を増産して対応した。
 一方、消費税反対運動の一環として、1円玉を家庭で溜め込むよう呼びかける市民団体もあった。
    











◆時代を切り取った写真を振り返り、次代を
象徴した「ことば」への想いをつづります。
 
 行列が続いた。朝夕のラッシュ時、サラリーマンが殺気を帯びてざっ、ざっと駅ホームに続く階段を行進する。それを見るだけで、僕は逃げ出したくなる。
 行楽シーズンには出かけない。どんなにおいしい食事を提供されようとも、店先の行列に何時間も並ぶこともない。
 だから行列のできる美術展も苦手だ。アートに触れて少しでも感性を取り戻そうとしているのに、行列に並んでいるうちに期待がイライラに変わる。自分のペースで作品を見ることができないなんて。「芸術は爆発だ」という前に、自分が爆発して
しまうのだ。
 「美術全集の絵でじゅうぶん」マナ・リザが日本にやってくる、と遺産で上野の東京国立博物館に出かけた母は、帰えるなりそう言った。絵よりも人の後頭部をを見る時間の方が長かったと言うのだ。1964年のミロ―のビーナスや65年のツタンカーメンの黄金のマスクも、そのとき限りの日本公開。気軽に海外に行けない時代に、鳴り物入りで登場した美術品を一目見ようと思うのは当然のことだ。
 何時間並ぼうとも、いやむしろ並んでみることに価値があった。ちょっと数年に一度開帳さ
 れる仏像を拝むように、アートは非日常の空間や時間のなかにある限り、特別な存在であり続ける。だから美術館という太刀者には意味があったのだ。
 劇作家の唐十郎の主宰した状況劇場は、箱物のヲ劇場脱し、紅テントで興行した。時に観客とケンカをしながら芝居が進む。最後。テントが跳ね上がり、下界との境が外れる。日常と連続していることが見えてくる。
 行列や箱とは無縁の、これも僕にとってのアートだつた。
(朝日新聞メディアプロダクシ
ョン校閲事業部長 前田安正)
 令和元年(2019)9月15日(月)    朝日新聞夕刊