竹下景子&藤原紀  「檜図屏風」  川中島合戦図屏風       
  戦国武将の武田信玄と上杉謙信の一騎打ちの描写で知られる「川中島合戦図屏風」(縦170.5センチ、横354.4センチ)が大阪市中央区の大阪城天守閣で開催中の「企画展示 サムライたちの躍動―大阪城天守閣名品セレクション―」で初公開中だ。屏風の中央に、戦国大名の中でも代表的な信玄と謙信を大きく描き、2人の勇ましい表情や刀、軍配団扇なども緻密に描かれている。7月17日まで。
「川中島合戦図屏風」大阪城天守閣で初公開中 
  作品の舞台は、越後国(今の新潟県)を拠点として上杉謙信と、甲斐国(今の山梨県)を本拠にした武田信玄が北信濃(今の長野県北部)の支配権をめぐつて争った川中島の戦い。1553年(天文4)年から約12年間続き、計5回の戦闘があったが、そのうち1561(永禄4)年にあった第4次川中島合戦が描かれた。検診が信玄の本陣に突入し、馬上から信玄に刀を振り下ろすと、信玄は手にしていた軍配団扇で刀を受け止めた。と伝えられている。
 この場面は甲州流軍学書「甲陽軍配」に記され、江戸時代に屏風や祭りの山車、のぼりなとに数多く描かれた。大阪城天守閣はほかにも「大坂夏の陣の陣図屏風」など多くの合戦図屏風を持つが、謙信と信玄の対決図がなかつたことから昨年度、京都の古美術
 商から購入した。作者不明とされ、江戸時代中期以降の作品とみられる。
 宮本裕次・大阪城天守閣研究主幹によると、制作時期によって描き方が異なるが、この作品については、検診と信玄の2人に優劣なく焦点をあてて迫力のある点に、江戸時代中~後期の作品の特徴が出ている。江戸初期の傑作「大坂夏の陣図屏風」では合戦の全容を描き、人物の大きさに武将も避難民も大きな差はないが、この作品は戦う両雄の姿は遠くにいる武将の倍以上の大きさだ。両雄の勇ましい表情、馬の顔も甲冑なども太い線を使い分けて色彩豊かに描かれ、周囲より目立つ。宮本さんは「講談などで謙信と信玄が豪傑として英雄視され、両雄を称賛するように迫力ある絵を描いた当時の大衆文化があらわれている」と話す。
 今回の企画展示は、今月末に開かれる主要20ヵ国・地域首脳会議(G20サミツト)で世界の注目が大阪に集まる機会に武家文化に関する名品を見てもらおうと考えたもので、合戦図屏風や甲冑、刀剣など計71点を展示する。
 入場料は大人600円、中学生以下、大阪市在住の65歳以上と、障がい者手帳をご持参の方は無料。午前9時~午後5時。27,28日は臨時休館。問い合わせは大阪城天守閣(06.6941.3044)へ          (鵜飼眞)
  かつて日本の山間部には、焼き畑という伝統農法が息づいていた。すっかり影を潜めた古来の営みの画像を、国立民俗博物館(みんぱく、大阪府吹田市)がホームページ上のデーターペースで公開している。同館名誉教授だった文化人類学者の故佐々木高明さんが撮影した20戦記の貴重な写真資料だ。
   焼き畑 伝統農法の営み
 故佐々木高明さんの記録 みんぱくDBで公開
 「焼畑の世界―佐々木高明のまなざし」のタイトルで、2代目館長を務めた佐々木さんが同館に寄贈した写真資料など約4万点からえりすぐりの画像を紹介。熊本・五木地方で1960年に撮影されたものを中心に、焼き畑の作業工程や現地の民族、信仰、人々の暮らし、伝統的な民家の姿などを克明に映し出す。
 焼畑は、一般に森を焼いてアワやヒエ、ソバなど異なる雑穀を年ごとに育て、地方が衰えると移動を繰り返す原始的な農法だ。かつてはにほんでも全国に残っていたが、多くが廃れてしまつた。
 それだけに、作業の拠点となる「出作り小屋」や道具類などの映像記録は興味深い、火を入れたときに燃えややくするため木登りして長いさおで枝打ちするなど、今では見られない手法も記録されている。モノクロが主だが、鮮やかなカラー写真も交じる。
    佐々木さんは58年から60年にかけて五木地方を訪れた。住民らと酒を酌み交わして焼き畑を調査・研究し、その成果に基づいて、中国西南部の雲南省や東南アジア北部などを中心に特有の文化が広がり、日本列島もその文化園に組み込まれていたとする「照葉樹林文化論」を展開。水田稲作が到来する前の縄文農耕とも関連づけられるなど賛否を呼び、一世を風靡した。
 同館の池谷和信教授は「佐々木高明の研究の原点はここ(熊本・五木地方)にある」と指摘する。東南アジアでの大規模な森林伐採などから環境破壊とも結びつけられがちな焼き畑だが、「ここには開発型とは違う環境との共生がある。再検討もなされ始め、関心は広がりつつあるようだ」と話す。
 自然と共に生き、その恵みを享受した、いにしえの日本人の営みを物語る佐々木さんの記録は、現代人のこれからのライフスタイルにも示唆を与えてくれそうだ。
   (編集委員・中村俊介)
(令和 )2019.6.12日(水)     朝日新聞夕刊