美御前御揃  ヤナイハラ I  白磁薄肉彫蓋付菓子鉢  丸木俊(赤松俊子)  長野県立歴史館  孔雀明王蔵 「望郷 
   孔雀に坐る明王が、静かなまなざしをこちらに向ける。12世紀(辺案時代後期)に描かれた仏画で、今に伝わる名品の一つ。1951(昭和26)に国宝に指定された。
 孔雀明王は、毒蛇を食べる孔雀を神格化したもの。災いを除く力があるとされる。密教の儀式で本尊となるこの仏画は、色彩がよく残っていて荘厳だ。衣の模様やクジャクの羽は、金箔を細く切った金泥によってきらびやかに描かれている。
 1903(明治36)年、故の名画をめぐつて、まだ若かった生糸の豪商・原三渓が、持ち主の大物政治家井上馨と相対した。2人とも茶の湯に熱心な数寄者だった。当時60代半ば過ぎていた井上は、この仏画に感心する30代半ばの腹にこう持ちかけたと伝わる「1万円なら譲ってもよい」。  「孔雀明王像」作者不明
  現在なら数千万円ほど、明治になって仏教より神道が重んじられるなか、破格の高値だつた。だが、腹はするまず、その値段で買いとった。売買は驚きと共に広まり、収集で新参者だつた原の名は一気に知れ渡ったという。
 横浜美術館の柏木智雄副館長は「元大名家や寺院から海外に流出する可能性もあったこれらの美術品を買い支えたのが近代の数奇者だつた」と話す。「しかも、原は美術品は専有するものではなく他者と共有するものだと考えていた」
 この一件以降、原の収集熱は増し、その審美眼で集めた作品は5千点以上と推定される。23年に関東大震災が起き、原の美術館建設構想は実らなかった。だが、旧蔵品は現在、全国の美術館に分散して収蔵され、人々の目を楽しませている。 (西田健作)
 外貨建て保険への苦情が増えている。生命保険協会による2014年度は前年比3割増しの2543件。生命保険が件数をまとめ始めた12年度の約4倍に膨らみ、過去最高だった。 外貨建て保険とは、保険会社が契約者から預かった保険料を米ドルやオーストラリアドルになどの外貨建ての資産で運用する商品だ。円建ての保険はテー超低金利政策の影響で利回りを期待できない。外貨建ては、より高金利のベン国債で運用するので利回りが高い。
 老後にまとまつた保険金を受け取れるタイプなど、貯蓄代わりに使える商品が多く、生保各社は「高利回り」をうりに積極的に販売してきた。大手生保5社の18年度の販売総額は約3.6兆円で過去最高だつた。
 一方で苦情も増えている。国民生活センターにはこんな相談を寄せられた。
 50代女性は5年前、銀行窓
口で外貨建での個人年金保険を勧められた。「安全」という担当者の言葉を信じ、満期になった預金600万円を保険料にあてて契約した。ところが最近受けた連絡では、支払われる保険金が元本より40万円も少なくなるという。
 外貨建て保険で、最も注意すべきポイントは「為替相場の変動による元本割れリスク」だ。
 たとえば、円相場が1ドル=100円の時に、100万円(1万ドル)の保険料を保険会社にに一括で支払って契約したとする。保険会社が運用し、満期となって1.2万ドルの保険金を受け取ることになったとする。このとき1ドル?80円と円高ドル安になっていると、円での受取額は96万円となり、元本割れとなつてしまう。為替相場によって大きく損することも、得をすることもある「ハイリスク・ハイリターン」の保険なのだ。
   苦情で多いのは「リスクの説明が不十分」というもの。保険会社が支払う保険料の額を「保証する」とうたい商品もあるが、あくまで外貨での話なので、円に替える時に損をしてしまうことがある。
 「利回り」の数字にも気をつける必要がある。契約書保記載されている「積立利率」は、払った保険料に対する実質的な利回りと異なることもある保険会社は受け取った保険料から手数料を引いた分を「積立金」とし、積立利率はこれがどれくらいのペースで増えてくれるかを示したものだ。
 例えば、保険料100万円を一括で支払うとする。保険会社が5万円の手数料をとると積立金は95万円。満期になって190万円の保険金を受け取るとすると、保険金は積立金の2倍だが、保険料総額に対しては1.9倍になる。積立利率は実質的な利回りより高く見える。
 生保協では4月から、顧客への説明資料に「実質的な利回り」を記載するように生保各社に求めている。ファイナンシャルプランナーの清水香さんは「外貨建て保険は複雑でわかりにくく、理解できないまま勧められて勝っている人もいると思う。デメリットをより丁寧に説明する必要がある」と話す。    (寺西和夫)
(令和)2019・8・13 (火)    朝日新聞夕刊