郷冨佐子  国分高史 駒野剛 稲垣康介   原直人   吉原桂子  高橋純子  原直人 
 指導者は誠実であれと説いたのは英国のチャーチル元首相だが、日本政界でこの言葉は極めて粗末に扱われている。
 憲法が首相らに義務づけている「誠実に答弁する責任」をあなたは全うしているのか―。安倍晋三前首相の「櫻を見る会」の問題で野党議員から問われた菅義偉首相は、先日の参院本会議でこう答えた。「私はこれまでも、国会においてお尋ねがあれば誠実に答弁をして参ります」
 首相になって初めての先の臨時国会での菅氏の態度を振り返れば、この答弁こそ不誠実そのものだと言うしかない。
 桜を見る会では、前夜の夕食会での一部の費用負担を安倍氏の関係者が認め、安倍氏や菅首相が国会で事実と異なる答弁を続けてきたことが明らかになった。野党は菅首相の見解と安倍氏の国会招致を求めるが、首相の答えはいつも同じだ。
 菅政権と国会 不誠実な答弁を暴くには
 「捜査中」や「裁判中」であることを盾に、安倍、菅両政権は数々の疑惑の説明を拒んできた。森友学園にからむ財務省の公文書改ざんの経緯を記したとされるファイルの国会提出に応じないのも、亡くなった近畿財務局職員の遺族が起こした損害賠償の民事訴訟が続いているとの理由からだ。
 だが、葵の御紋の印籠のように掲げるその理屈は、本当の正しいのか。
 「捜査中でも裁判中でも、議院による並行捜査は狩野です」と話すのは、国会の実務に詳しい高見勝利・上智大名誉教授(憲法)だ。高見さんによれば、裁判に不当な影響を及ぼす干渉をしたり、判決内容を覆したりする目的での調査は、司法権独立の侵害にあたるので許されない。そうでなく、立法や行政監視が目的の調査なら直ちに司法権は侵さないし、検察の捜査中に立法府が同様の目的で調





 
 「捜査機関の活動に関わることであり、答えは差し控える」「(招致するかは)国会でお決めになることです」
 桜を見る会で深刻なのは、検察が乗り出すまでは疑惑にふたがされるのを許してしまつたことだ。「後援会からの支出は一切ない」などの不自然極まりない答弁を時の首相が延々と続けたのに、立法府の力でその虚偽を暴ききれなかった。
 2月の衆院予算委で辻本清美氏(立憲民主)は、夕食会場のホテルから安倍氏の説明と異なる答弁を得たと明らかにした。それでも阿部氏は「私の事務所がホテルに確認したことを述べている。それを信じてもらないなら、予算委は成立しない」とまで言って追及をはねのけた。
 「決定的な質問だったのに、安倍氏は強弁し続けた。それができたのは、何があっても党を握りつ   査しても、それ自体は問題にならないという。
 操作も裁判も、国会からの要求を無条件で拒む免罪符ではないということだ。「それなのに、これらを盾に議員の諮問にも答えないというのは、憲法63条の答弁義務に反する問題です」と高見さんはいう。 
 ぶすと思っていたからだろう」と自民党に近い関係者は見る。
 強制力のある国政調査権を発動するには、野党だけでなく自民、公明の与党の賛成が必要になる。菅首相が「国会でお決めになること」と繰り返すのも、与党が応じることはないと高をくくっているからに違いない。これは裏を返せば、与党の議員たちも「官邸には刃向けまい」と足元を見られているということだ。
 政治改革から30年近くをへて、首相官邸の権力が集中しすぎた弊害は明らかだ。国会の少数派でも実効的な行政監視ができるような統制力の許可は不可欠だろう。
 もつとも、いくら制度を改めても、それを運用する政治家や官僚に誠実さや自制心がなければ絵に描いたモチになるだろた。不条理を正せるかどうかは、結局は人のありようにかかっている。
 2020.12.9.10 朝日新聞夕刊より