郷冨佐子  国分高史  駒野剛  稲垣康介  原直人   吉原桂子  高橋純子  原直人 
 ほぼ毎週、私の涙腺が緩むテレビ番組がある。宣伝を買って出たい。
 土曜日の午前9時55分からフジテレビ系列で放映中の「ライオンのグータッチ」。スポーツに打ち込む小学生のもとに元トップアスリートが臨時コーチにやって来る。公式戦で一度も勝ったことがない」といった弱小チームが多い。2カ月程度の特訓を積んで、成果を披露する大会までの成長を追うドキュメンーだ。
 年を取って涙もろくなるのは、脳の前頭葉の働きが衰えて感情のブレーキが利かなくなるのが一因らしい。ただ、「グータッチ」に心動かされるのは老化とは無縁の力だと思う。新型コロナウイルスの「第3波」に見舞われ、延期五輪への風当たりは厳しさを増す。そんな日常で子どもたちが純粋にスポーツに打ち込む汗と涙を見ると、スポーツの価値を再確認できて救われるというか、心が浄化された気分になる。  
 スポーツの価値 大山加奈さんに教わったこと 
 番組制作の舞台裏を聞こうと、フジテレビ本社を訪ねた。目の前のお台場海浜公園の海上には巨大な五輪マークのオブジェが、「お色直し」を終えて4カ月ぶりに戻っていた。編成部の長嶋大介さんにコンセプトを聞いた。「一つの企画の放映は3~4週にわたります。コーチとの出会い。練習を始めて課題を発見し、改善を図る。そして大会で勝利をめざす、というのが基本の流れです」。「少年ジャンプ」伝統の3大原則「友情・努力・勝利」が思い浮かんだ。ただ、「グータッチ」は健闘が及ばず、目標に届かないことも多い。小学生の明日の糧となる号泣が、切なくていい。
 トップアスリートの言葉も刺さる。練習する意味、緊張ての向きあい、仲間との絆の大切さなどを現役時代の成功体験、失敗談を交えて説いていく。「将来、人生のいろいろな場面でも通じる、一般論に昇華して語ってくれるのか素晴らしい」と長嶋さん。子どもに諭しているから表現は平易だけれ





 
 これまで5回、コーチ役で登場したバレーボールの元五輪代表、大山加奈さんに競技の魅力を尋ねた。「レシーブからトス、そしてアタックと、常に次の人が少しでも打ちやすいボールをつなぐのが大切。自然と他人を思いやる心が育まれます」
 私が大山さんを初めて取材したのは16年前のアテネ五輪の直前だつた。ギリシャ駐在の私は、日本代表が現地の日本人学校を訪問する現場にいた。20歳だつた大山さんの「自分が教えることで子どもがうまくなるのが楽しい」のコメントが当時の紙面に残っている。根っこからの「先生」なのだ
 26歳で引退した後、バレー教室などで全国を巡っていて、過度   ど、大人の視聴者も自分に置き換えて反芻したくなる「名言」が多い。
 数多くの競技をとりあけてきたなか、プロデューサーの望月靖子さんは「バレーボールはチームワークが揺らぎやすい。子どもたちが神がかった成長を見せるケースも多いはずです」と教えてくれた 
 な練習や体罰など行き過ぎた指導で不幸な思いをしている子どもがいることを目の当たりにした。
 「悲しすぎる。これを救い出すのが、私の使命」。勝利至上主義の弊害をなくすためにトーナメント方式をやめて、リーグ戦に変えることを提唱する。より多くの選手に出場機会が巡ってくるように。
 中学、高校時代の大山さんは、選手の長所を伸ばし、自発的な向上心を促す恩師の指導で日本一に輝いた。しかし、日本代表では一転、欠点ばかり指摘されることで自信を喪失したことがあった。「怒られないように、メンバーから外されないように」とマイナスな思考に陥り、合宿から逃げ出そうとした経験もある。
 「大好きなはずのスポーツで心を病むなんてあってはならない。自分を大切に思える心を育みたい」。自分の苦しんだ経験が、子どもへのまなざしににじむ。
 2020.12.18 朝日新聞夕刊より