嵐圭史 
 スパコン 
五郎丸         
   
  前進座を離れて3年、80歳で新たな門出を迎えます。70年を超えた舞台生活の中で印象的な作品をあげて「私流」の作品、演技論をつづり、役者人生を振り返りました。
 先輩たちは、歌舞伎界の封建的な徒弟制度や門閥制度を打ち破り、実力があれば誰でも主役が張れるようにと、前進座を立ち上げました。全座員で意思決定する民主的な運営、座員の生
70年の舞台生活と「新人」の決意   
「私流 演技とは わが役者人生の歩みとともに」
              俳優 嵐圭史さん(80)
 活の保障などを掲げた劇団を、満州事変の4カ月前に作った。驚くべきことです。
 私は劇団の住宅で生まれ育った第2世代。その歴史と創造理念の実践の中で育てられた役者です、運営を任されるようになってからは、座員の生活保障にとても苦労しました。
 歌舞伎から現代劇まで、これだけ多面的な演目を持つ劇団はありません。とはいえ、演技の土台は歌舞伎です。特に荒事で鍛えられた「肚」呼吸法、役の根っこをつかむ意識の両面ですね。それらの根底に真実を引き込む力が強ければ強いほど、そ
  のリアリティーに裏打ちされた様式性の稔が獲得される。例えば歌舞伎十八番『鳴神』の荒事になってからの所作は、まさに「究極の怒り」の表現と言ってよいでしよう。米国公演でも観客が総立ちで拍手してくれました。歌舞伎のダイナミズムとリアリティーが伝わったんですね。
 本の最初は、再出発の舞台として上演予定の『玄朴と長英』を採り上げました。激動の幕末を舞台にした真山青果先生の名作。真山さんの生きた大正デモクラシーの理想と現実の間での揺れが投影され、新たな時代の到来を感じさせる舞台です。これは現代にも通じる。
 私自身、いま「新人」に戻った気持ちです。その決意の書でもあります。
    構成・滝沢文邦 
    写真・家老芳美
2020.12.16       朝日新聞夕刊より